株式会社童心社の井上厚治さん(左)と、大熊悟さん(右)にお話を伺ってきました。

大熊さん
弊社は来年創立60周年を迎える紙芝居と児童図書の専門出版社です。

一番有名な作品は『いないいないばあ』という絵本なんですが、実は日本で一番読まれている絵本(トーハンミリオンブック2015年度版調べ)でして、今年中に累計600万部に届く勢いです。

--600万部! すごいですね。でも私は読んだ記憶がないような……。

大熊さん
『いないいないばあ』は対象年齢が0歳からの赤ちゃん絵本です。

赤ちゃんの頃なので、読んでもらった本人は忘れてしまっている方もいらっしゃいますが、一緒に読んだお父さんお母さんたちから、「赤ちゃんが本当に喜んだ絵本」として、口コミで広げて頂き、今では3世代に渡って読み継がれているロングセラー絵本です。
 

--今回のコンテストの目的を教えていいただけますか。

大熊さん
どの出版社でもそうなんですが、新しい才能を発掘していかないと未来はありません。
児童書の場合はロングセラーが多いので、それらを大事に売っていくという側面も強いのですが、同時に才能ある新人を見出すということを絶えずやっていく必要があります。
戦後ずっと幼年童話を描いてきた有名な作家さんはたくさんいらっしゃるんですが、そういう方がだいぶ高齢となる一方で、次の世代の人が充分には育ってきていないという状況もありますね。

絵本に関しては、特に小さい子が対象のものほど、なんというか、資質が問われるんです。
一般書にはない難しいところがありまして。
今は絵もテキストも両方を一人で作る絵本が全盛なんです。もちろん両方を高いレベルでできる作家さんもいるのですが、私たちとしては特にしっかりとした物語性をもつテキストが書ける作家さんを見出していきたいと思っています。
 
――このコンテストがテキストのみを審査するのはそういう理由なんですね。

井上さん
そうですね。絵本のコンテストは他にもいろいろありますが、基本的には絵とテキストの両方を審査するものが多いかと思います。
私たちのコンテストは、物語性の強い作品を出版していきたいという思いから始まっていて、その点に特徴があります。


 
--個人的にこれまでの受賞作品で印象に残っているものはありますか?
 
井上さん

私は、第2回の受賞作、清水真裕さんの『たかこ』です。
この作品は店頭でも、「この女の子だれ?」と、子供の目を引くそうです。
 
現代の小学校に平安時代のお姫様が転校してくるというストーリーです。
最初は戸惑うクラスメイトですが、ある出来事がきっかけになって受け入れていく、というお話です。
現実のクラスにもちょっと変わった子っていると思いますし、もしかしたら自分のことをそう思っているかもしれないけど、「いろんな子がいていいんだよ」というメッセージが理屈っぽくなく伝わってきます。



--大賞に選ばれたものは絵本として出版されるとのことですが、どういう方の応募が多いのですか。やはりプロ志向の方でしょうか?

大熊さん
このコンテストは日本児童文学者協会という作家の団体との共同企画なんです。日本児童文学者協会が発行している雑誌「日本児童文学」へのコンテストの広告を中心にPRしていましたので、やはり作家志望の方からの応募が多いですね。

また、前回までは、その雑誌に応募券をつけ、応募券がなければ応募できないようになっていたんですが、これからはできるだけ門戸を広げて、多くの方に投稿いただきたいと考え、今回からは応募券なしでも応募して頂けるようにしています。

幼年童話は一般書よりも書くのが難しいのですが、「短いので私でも書けるかも」と思う方が多いのか、応募数が莫大な数になるんです。
でも、初めて書く方のなかに素晴らしい才能があるかもしれません。
下読みや選考の過程で編集部の作業は激増しそうなのですが、苦労しても多くの作品を集めたいと思っています。
 

--児童書の難しさってなんでしょうか。

大熊さん
長いものは長いもので難しさはあるのですが、ある意味テクニックを習得できる部分があるんです。面白いプロットを作っていく努力をしていくと、ある程度書いているうちに上手くなっていきます。
ですが5~10枚の短い作品になりますと、本質をガンと出すことになるので、テクニックでごまかすことが難しい。あとは子供にとって魅力があるテーマが選べていないとダメですね。幼児を対象とする作品ほど普遍的な世界を描けることが大事になります。
大賞に選ばれた作品は、弊社から商業出版することになりますので、そのクオリティを満たすのは簡単ではないと思います。
実際、過去のコンテストでも残念ながら大賞なしの年もありました。

井上さん
最終審査は作家の先生方と編集長の大熊が行います。
作家志望の方が多いこともあり、応募者の方には、審査員の先生方に合わせた作風で応募される方もいるそうですが、いろんな作品があっていいので、特にこういう傾向のものを求めているというのはありません。子供にとって魅力的なものがなにかということを考えて、どうぞご応募ください。


 
――最後にひとこと。
 
大熊さん

いろんな絵本を読んで、自分の世界観を作っていってほしいですね。
ハッピーエンドじゃなかったとしても、読み終わったあとには気持ちが前に向かっていくものがいいですね。
子供にとって楽しいこと、辛いこと、悲しいこと、そういうのを自分の子供時代を思い出しながら作っていってください。

井上さん
絵本の良さってたくさんありますが、コミュニケーションしながら、子供と一緒に読む時間を楽しむものだと思います。
ぜひ、子どもといっしょにその絵本がどんな風にやりとりしながら読まれるか、想像しながら書いてほしいですね。
 
 

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