日本出版美術家連盟(JPAL)の星恵美子さん(左)と、多屋光孫さん(右)にコンペナビ編集長橋本がお話を伺ってきました。
挿絵画家が長者番付にのる時代
- 橋本
- このインタビューは、私が「なんか面白そう」と思ったコンテスト主催者さんに話をお聞きしているのですが、今回は特にインパクトが強そうです。
- 多屋さん
- 私たちは出版に関わるプロのイラストレーターの集まりです。
戦後すぐに創設されて70年続いています。
戦前戦後は出版黄金時代といわれていました。活字に餓えた人々が奪い合うように本を手に取ったんですね。
そんななか、本の売り上げに大きな影響を及ぼしたのが挿絵画家の存在だったんです。- キラ星のように大活躍していた挿絵画家の地位はとても高くて、日本出版美術家連盟の創設者の岩田専太郎は当時、長者番付にも載っていたんですよ。
- 橋本
- すごい! 失礼ですが…今では想像できないお話ですね。
- 星さん
- 今でいうと売れっ子漫画家のようなものかしら。
ですが、だんだんと出版業界が多様化するなかで、価格のダンピングがまかり通ってしまったんです。
最盛期には300人いた当会の会員もだんだんと人数が減ってきてしまいました。
紀伊國屋書店とのコラボレーション!
原画の価値を一番知らないのは作者だった?
- 橋本
- 今回開催するコンテストで入賞した作品は、紀伊國屋書店4Fフォーラムで行われるJPAL主催紀伊國屋展2016に出展して、そこで販売もすることができます。
紀伊國屋書店さんとコラボした展示会を行うのはこれが3年目だということですが、どのような目的があるのですか? - 星さん
- 挿絵の価値を再発信したいという試みなんです。
出版においても重要なビジュアルコンテンツであることを、出版社にも書店にも、読者の方にも展覧会という形で見ていただきたかったんです。 - 橋本
- ただの展示会ではなく、その場で購入もできるようにしたのは何故でしょうか。
- 多屋さん
-
挿絵画家というのは、絵を描いて、本に載って、出版社から原稿料をもらったら、それで「良し」としてしまうところがありまして。販売するという考えが稀薄なんです。
出版社から返却された原画の管理もあまりちゃんとしていない方が多くて。
ひどい話だと、作者が亡くなられたら遺族の方がゴミの日に大切な原画を捨ててしまったという話も聞いたことがあります。
- 橋本
- え~! それはひどい…
- 星さん
- 手描き原画の価値は、作者よりもファンの方のほうが知っているんじゃないかしら。
去年の展示会でも、大人買いっていうんでしょうか。一人で何十枚も原画を買っていってくださる方がいたんです。初版本を集めるかたがいるように、一枚しかない原画の貴重さと価値を知っていて、原画を集めたい人たちが大勢いるんだということに、私たちも改めて気づかされました。 - 多屋さん
- 紀伊國屋書店さんとコラボレーションするのは今年で3年目なのですが、毎年着実に来場者も売り上げも増えています。
個人が原画を販売しようとしたら、個展を開くにしてもインターネットで売るにしても、手間もリスクもかなりのものがあります。本業を圧迫しないためにも、この機会をぜひ利用してもらいたいですね。
すでに自分のイラストが出版物に掲載されているというプロの方でしたら、どなたでも参加していただきたいです。
めざせ海外進出!夏にはニューヨーク展が決定
- 橋本
- 今回のコンテストの入賞者は、東京でのJPAL紀伊國屋展2016だけではなく、ニューヨーク展にも出展できるということですが。
- 星さん
- よくぞ聞いてくださいました(笑)!
今回のお話は紀伊國屋書店の全米総支配人が「ぜひやりましょう」とおっしゃってくださいました。
マンハッタンの紀伊國屋書店にはまるで日本かと思うくらい、日本の本が多くあり、日本に高い関心を持つニューヨーカーが多く訪れます。
はじめての試みとなるニューヨーク紀伊國屋書店での海外展示販売は、日本の挿絵が浮世絵に勝るとも劣らないインパクトを海外にあたえるきっかけになると思っています。 - 橋本
- 最後に一言お願いします!
- 星さん
- 私たちと一緒に挿絵文化と日本の出版美術を盛り立てませんか。
日本出版美術家連盟(JPAL)は『貴方』からの応募をお待ちしています!